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スポーツウェアメーカーの事業領域拡大戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
出典:令和7年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問2
K社は,主に中価格帯の製品を提供するスポーツウェアメーカーである。若年層の人口減少に伴う国内スポーツウェア市場の縮小によって,収益が頭打ちになっている。K社はこれまでも事業領域の拡大に取り組んできたが,新しい事業については社内の意思統一を図れず,結果を出せていない。今後の成長のためには,経営の方向性を明確にして,社内の意思統一を図った上で,事業領域を拡大する戦略を策定する必要がある。K社の経営陣は,経営企画室のA室長に事業領域拡大戦略を策定するよう指示した。
A室長は,まず自社の外部環境の分析を行った。その結果は次のとおりであった。
スポーツウェア市場の縮小が進んでいて,スポーツウェアの需要は横ばい又は減少傾向にある。
スポーツウェアは,動きやすさに加え,保温性,通気性などの機能,及び軽快さやスマートさをアピールできるデザインの良さが要求される。さらに,スポーツチームのユニフォームでは,色やロゴなどのオリジナル性が要求される。
ワークウェアのメーカーが低価格帯のスポーツウェアを開発し,スポーツウェア市場に参入している。逆に,他のスポーツウェアメーカーがファッション性に富むワークウェアの発売を計画している。このように市場の垣根を越えた競争が生じている。
ワークウェアはスポーツウェアと同程度の市場規模がある。法人需要が中心であり,業務の必需品として定期的に買替えが行われるので継続的な取引ができる。
従来,ワークウェアは消耗品扱いであり耐久性や低価格であることが重視されてきた。しかし,近年は従業員満足度を高めるために,ワークウェアにも快適さやデザインの良さを求める企業が増えており,需要が拡大している。しかし,ワークウェアメーカーは,いまだに市場の変化に対応する生産体制や販売体制を構築するまでには至っていない。
A室長は,ワークウェア市場が事業領域拡大の候補となり得るのか,自社の事業性を確認して判断するために,自社のバリューチェーン分析を行いワークウェア事業に適用できる自社の強みとなる活動を,次のように確認した。
スポーツウェアで培った製品企画力,型紙の設計力,及び生地の裁断ノウハウによって,動きやすさやデザインにこだわった製品を企画・設計できている。
保温性,通気性,防水性及び速乾性に優れた繊維の研究を行い,共同開発した高機能生地を,繊維メーカーから調達して自社の製品に採用できている。
多様な製造委託先と提携してサプライチェーンを構築し,様々な顧客要望に対応できる生産体制を備えている。長年の取引によって築いた信頼関係を基にした生産体制で,大量生産の効率性と様々な顧客要望に対応できる柔軟性を両立させたマスカスタマイゼーションの実績がある。
長い歴史と信頼性のあるブランド力があり,BtoB,BtoCともに広範な国内販売網・販売チャネルを築いている。多数の商談を並行して進め,同じスペックの小ロットの注文を集めて大きなロットにすることによって採算を確保できている。
次に,A室長は自社の強みを,経済的価値(Value),希少性(Rarity),模倣困難性(Imitability),組織体制(Organization)の観点で分析するVRIOフレームワークに沿って評価することにした。ワークウェア市場で競合と想定される他社と比較した自社の競争優位性に対する評価を表1に示す。
| 活動 | 自社の強み | V | R | I | O | 競争優位性に対する評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 企画・設計 | 製品企画力,型紙の設計力,生地の裁断ノウハウ | ○ | ○ | 既存のワークウェアよりも動きやすさやデザインに優れた製品を企画できる。同等の技術力を有する他社が存在する。 | ||
| 開発 | 繊維メーカーとの高機能生地の共同開発 | ○ | ○ | ○ | 短期的には競争優位性を維持できるが,数年で他社に追随されるおそれがある。 | |
| 生産 | 長年の取引によって築いた生産体制 | ○ | ○ | ○ | ○ | マスカスタマイゼーションを可能にする生産体制は,他社では容易に構築できない。 |
| 販売 | 広範な国内販売網・販売チャネル | ○ | ○ | ○ | ○ | 小ロット注文を集積して,他社では採算が合わない注文にも応えることができる。 |
注記 VRIOのそれぞれについて,自社の強みが満たす要素に“○”を記入している。
A室長は,表1から自社の強みを次のように分析した。
“生産体制”と“国内販売網・販売チャネル”は,希少性のある模倣困難な強みである。“マスカスタマイゼーション力”によって,ワークウェアに色やロゴなどのオリジナル性を求める顧客の要望にも柔軟に対応できる。また,“小ロット注文の集積力”は,ワークウェアの生産販売にも生かすことができる。
“広範な国内販売網・販売チャネル”で集めた顧客の要望に,“長年の取引によって築いた生産体制”で対応できることが,他社が容易にまねできない自社のコアコンピタンスであり,競合他社に対して持続的なaを築ける。
A室長は,①ワークウェア市場の変化は自社のコアコンピタンスを生かせる新事業領域としての魅力を高めると考え,ワークウェア市場に参入するための施策を次のように検討した。
法人からの需要に対して,スポーツウェアの軽量性,伸縮性,保温性,通気性などの機能を生かしたワークウェアを開発する。
生地やファスナーなどのスポーツウェアの素材をワークウェアにも使用することによって,作業中の動きやすさと快適性を提供する。
ターゲットとなる企業の購買担当者や業界関係者の間で自然に共有されるような,信頼できる情報を提供する。
ワークウェアとして会社や職場で着用するユニフォームにbを要求する顧客に対しては製品をカスタマイズする。
現場作業者から事務スタッフまでカバーする,実用的かつスタイリッシュなデザインをアピールする。
業種や業務に特有な作業特性に合致した製品を幅広く提供する。
②小規模な法人や大企業の中の特定部署といった少人数分の注文を集積し,大きなロットにする。
スポーツウェアの製造では経験したことのない機能を求められた場合には,自社のサプライチェーンを足掛かりにして,不足する技術を補う提携先を開拓する。
スポーツウェアの素材を使用してワークウェアを生産することによって,調達において規模の経済性を発揮し,cを実現する。
A室長は,自社の新事業の展開を市場に認知させるブランド戦略が重要であり,スポーツウェアメーカーとしての認知度と信頼を得ている自社の企業ブランドのイメージを再構築する必要があると考えた。③自社の企業ドメインを“人々の活動のパフォーマンスを最大限に発揮させるウェアの提供”に再定義して,新たな企業ブランドとワークウェアの製品ブランドを展開する次の案を検討した。
新たな企業ブランドにおいて自社が長期的に提供する価値を,dによって取引先,従業員,顧客,株主など広範なステークホルダに向けて発信する。
自然にユーザーが口コミを拡散する手法であるバイラルマーケティングを通じて,製品が提供する価値に焦点を当てたメッセージを業界関係者に発信する。④製品サンプルの提供などを受けて,使用した人たちに情報を広めてもらうことによって,ワークウェア市場への製品ブランドの浸透を図る。
A室長は,以上の事業領域拡大戦略を策定し,経営陣に報告した。
本文中の a に入れる適切な字句を,本文中の字句を用いて,5字で答えよ。
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本文中の下線①について,A室長が魅力を高めると考えたのはワークウェア市場のどのような変化か。45字以内で答えよ。
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本文中の b に入れる適切な字句を,本文中の字句を用いて,15字以内で答えよ。
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本文中の下線②について,この対応を可能にするK社の経営資源を解答群の中から選び,記号で答えよ。
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本文中の c に入れる適切な字句を10字以内で答えよ。
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本文中の下線③について,企業ドメインを再定義することは,社内に向けてどのような意義があるか。本文中の字句を用いて,30字以内で答えよ。
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本文中の d に入れる最も適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
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本文中の下線④について,使用した人たちに情報を広めてもらうことは,ワークウェア市場への製品ブランドの浸透にどのような効果があるか。本文中の字句を用いて,20字以内で答えよ。
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